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1998年の創業以来、ユニゾン・キャピタルは開かれた広いビジョンで、長期的利益へ繋がる中堅企業向け投資を行ってきました。共通の⽬標に向かって力を合わせることで、必ず成⻑出来るー。創業時の信条を源泉に、20年を経た今も、投資活動を通じて「ユニゾン=同じ旋律を奏でる」の実現に取り組みながら、投資先企業、そして社会の成長と価値向上のサポートをしています。


2023年より、管理職〜経営陣を対象に、産業僧による1on1の対話や管理職向け研修・講演等、Interbeing社のサービスを導入。創業メンバーであり、代表取締役の川崎達生氏に、導入の経緯や課題、今後の期待についてお話を伺いました。



 


同じ組織に身をおいて、同じ目標に向かっていても、解釈や向き合い方は人それぞれに異なります。様々な人生が混ざり合うなか、僧侶を交えて対話をするとどうだろう。異なる言葉と視点から、「わたし」や「わたしたち」を語り直すと縁の歩みがみえてくる。それぞれの声が、それぞれのトーンであらわになる時、今ここに応じたユニゾンが展開していくかもしれません。


言語モデルをベースに構成されるAIは、意味や論理を媒介に応答を生成します。カテゴライズや正誤といった “据わり” のよい分別が得意であるものの、それは、この世の一側面に過ぎません。「声の主」を意味するパーソンとしての人と人、そして、人とAIが豊かに交わり創造していくために、私たちは、自らに備わる野生に立ち返り、その身体性や感性を存分にいかして生きることが必要です。「僧侶 × AI」 の産業僧は、大切な鍵となる「声」に注目をして、これからも探求を続けます。


松本

本日は、よろしくお願いいたします。


初めてお会いしたのは2年前、2022年のダボス会議(世界経済フォーラム)でしたでしょうか。そこから会社同士のご縁にまで発展しまして、大変ありがたいことです。ダボス会議のような場に、日本の僧侶がいることについてどんなふうに受けとめておられましたか。



川崎達生(以下、川崎)

ダボス会議には、世界中から様々なリーダーと称される方々が集まります。欧州の場ですから、当たり前のことですけれど、焦点を当てるアジェンダや登場人物もまた、欧州中心になります。日本のプレゼンスは、相対的に薄く低くなるわけです。そういったことを差し引いてみても、もう少し、日本は色々な形で “いい目立ち方” ができるといいだろうなと行く度に思います。とはいえ、手を挙げてそうなることではありませんから、なかなか難しいことだなと思っていました。そうした場に、いかにもな格好をして歩いているお坊さんを見かけて、その姿から、中国のお坊さんではなさそうだ、タイのお坊さんであれば、袈裟の色はオレンジだしな、と。なんとなくそれぐらいの違いがわかる人が見れば、何も語らなくとも「日本だ」となる。こういうことなんだ、と。これは面白いなと思いましたね。


日本は、宗教に関する見方がアメリカやヨーロッパの一神教を中心とした文化に比べて、幅が広い。いい意味で自由度があるといいますか、何か文化的な広がりをもったもの、あるいは、人生哲学のような話として受け取られることが多いと思います。そういったものは、日本のカルチャーを全面に押し出すことと表裏一体であろうと。そういう意味でも、あの場にお坊さんがおいでになっているのは面白いなと思いました。会合の主催者がスピリチュアルリーダーの方々をどれだけ意識的に招いているかはわかりませんけれど、宗教的指導者が参加されているという認識がありませんでしたので、面白い、ニッチな方が来ているんだなと思いましたね。



違う言葉、違う視点。違うものを投入したら、どうなるだろう。



松本

ビジネスマンが集まる場では、人はビジネス界の文化様式のなかで行動したり発言したりするものです。ビジネスパーソンらしい、リーダーらしい振る舞いをするわけですが、そうした場やコミュニティ、あるいは組織のなかに僧侶がいて、対話や話をすることについてどのように思われますか。「投入してみたらどうなるんだろうか」といったご関心もあって、社内に産業僧を取り入れていただいたのかなと思います。そこには何か、思いや期待値のようなものはありましたか。


川崎

おっしゃるように、少し違うものを投入するとどうなるんだろうかと、そういった関心が最初のきっかけですね。ビジネスにおいては、どちらかというと、例えば社内のヒエラルキーをみて組織のあり方を検証したり、新しいマーケットに対していかに仕向けるかといったことを検討したり、話す内容にはおおよそ決まったような塊があって、それに沿った会話がなされるわけです。けれども、松本さんと1対1でお話を伺ってみると、色々な視点でものの語りをされる。主には「組織はどうやったらよくなっていくんだろうか」といった問題意識のうえに、ビジネスマインドをもったお坊さんと話をしながら、そこに「個人の視点」を入れていくーー個々の人たちが、どうすれば、それぞれに持ち合わせた多様なものを表に出せて、能力を発揮できるのかーーそういったことに繋がっていくのかなと思っていました。よくあるような、組織改善の講師ということでもないですし、いい意味で、面白い反応になるのではと思っていたところはあります。



同じゴールに向かっていても、それぞれにもつ異なる声を響かせる



松本

普段、会社の経営や組織をどうしていくかについて考えるなか、少し違うものを入れて揺さぶる必要性といいますか、何か課題を感じることがあったでしょうか。


川崎


危機感というわけではないかもしれませんが、私自身は会社の経営を長くやっていますから、その前提に立てば、20年余り前に始まったユニゾン・キャピタルと、今日のそれは同じようなものだという感覚がどこかに存在しています。かたや、昨年入社した人もいれば、三年前に入った人もいます。同じ場所で、おそらく同じゴールをみていながら、みんなそれぞれに違うものを背負って、違う期待値で働いている。ですから、色々なすれ違いや思いの違い、了解していることの違いというのが結構あるだろうと。実際に、あると思うんです。そういうことを積み重ねた時に、問題発見の予見ができるものが必要なんだろうか、と。問題を探すわけではないですが、語られない想いのようなものがどこかにあって、押し込んでしまっておけば、見えないし聞こえない。それでもいい、ということかもしれませんけれど、それでは不健全にもなり得ますから。そんななか、「話す言葉やそのトーンを分析すると、埋もれているものが見えてくる」ということに、一つの試みとして、なるほどという感じがしました。


松本

声、ですね。私たちは、一人一人が声をもっていて、人を表す「パーソン(Person)」という言葉は「ペルソナ(Persona)」が語源にあって、「ペルソナ」は「声の主、声をもっている人」というのがその原義らしいのです。ともすれば、組織のなかで埋もれがちなパーソン性が引き出されるように、組織の風通しをよくする。組織の風通しもそうですけれど、自分自身の声が聞こえなくなっていることもあると思うので、一人一人が声を出していくお手伝いができたらという思いでやっています。ですから、そこに期待をしていただけたことは嬉しいです。


今は、何名ぐらいの方が社内にいらっしゃいますか。


川崎

フルタイムではない方も含めて50〜60名といった規模感です。


松本

小学校の1クラスより少し多いくらいでしょうか。顔が見えるくらいのサイズ感ですし、話したことがない人がいるといった感じではなさそうですね。お互いの声が届くはずの規模感でも、声が聞こえてないんじゃないかと、そういう感覚もあるわけですね。


川崎

大きな広間があって、みんながそこに集まって向かい合って座っていれば、あまりそういった感覚には陥らないと思うのですが、実際には、物理的にお隣同士というわけではありませんし、事務所に同じタイミングでみんなが揃うわけでもありません。取り組んでいるタスクも個々にバラバラなところもあって、一人と他の49名との間に自然なコミュニケーションが起きているかというと、なかなかそうはなりません。日々の活動を省みた時、口を聞くことも、目を見ることもない人たちが結構な数いる状態が、自然になっているという現状があります。



宗教に括られない「僧侶」が組織に施す「布教」とは



松本

そんななかで、お声を掛けていただいた。「僧侶」というと、海外では「宗教」の括りというより、どちらかというと「禅マスター」や「プラクティショナー」といった扱いの文脈でお声掛けいただくことが多いです。一方で、日本では日本なりの「お寺の人、仏教の人」という受けとめられ方があって、組織に異物を持ち込むにしても、実際に「僧侶」を取り入れるにはそれなりのハードルがあったのではないかと思います。実際のところ、どうだったでしょうか。


川崎

そうですね。これがまさに、声が聞こえていなかったり、見えていないということの傍証だったと後で思うのですけれど、仰るように “宗教がかった感じ” について、社内では全く二分する反応がありました。ビジネスの観点でニュートラルな人と話ができるという「ニュートラルさ」をそのまま受けとめる方と、宗教的な観点からの持ち込みに違和感を感じる方とにすごく分かれましたね。考えてみれば、普段、宗教について語ることはうちの会社ではありません。大きな議論になったわけではないですけれど、社内の人たちの反応については、予想よりかなり幅があるものだなと思いました。


松本

実際は、決して「宗教」としての仏教のお話をしているわけではないのですが、こういう取り組みにおいて僧侶であることの強みや意味は何かというと、「布教力」であると思っています。これだけいうと誤解されやすいかもしれませんが、「布教」とは何かというと、お寺においては仏教、つまりブッダの哲学を、今生きている人たちのコンテクストにどれだけ紐付けるかということ。翻訳者として通訳をすることですね。


では、会社において何を布教するかというと、企業理念であったり、パーパスやバリューであったりします。同じ会社で働いていても、同じ理念を掲げているはずなのに、気がつけばそれが、掛け軸だか置物だかになってしまっていて、日々の業務と全然紐づいていない、意識に昇ってこないということはあると思います。そこを結んでいく。そして、なぜ私は、人生の限られた大切な時間をこの会社に投入しているのかということに、あらためて向き合ってもらうような、そして、この会社で働く意味と自分の人生の意味がいかに重なるのかということに向き合ってもらうような機会を提供するものだと思っています。



ですから、宗教としての仏教やその教義が出てくるわけではないのですけれど、そうはいっても僧侶の格好をしていますから、難しさがあることは、自分でも感じてはいるところです。


川崎

そういう意味では、いわゆる組織改善プロジェクトにあるように、「あなたはこういう人ですね、であれば〜」と一人一人の個人の性格や傾向をグルーピングして、ある種の期待通りのフレームワークに則って解説をしてもらった方が、収まりよく感じる人もいるんだということですよね。そういったことが、僕にとっては新鮮な発見でした。



異なる言語で語り直す、経営者に向けた1on1



松本

ユニゾン・キャピタルでは、マネージャーやパートナーといったポジションの方々と1対1のお話をさせていただきつつ、時々、川崎さんご自身とお話をする機会も頂戴しています。川崎さんご自身、幅広いジャンルの方々と、経営者のお立場から対話をされる機会があるかと思いますが、あえて私のような僧侶と多少なりとも対話の時間を定期的にもってみようと思われた背景には、どんな意味合いや価値をそこに見出されていたのでしょうか。


川崎

そうですね。ひとつは、お話を伺っていると、出てくる言葉や使われる言葉が平たくて理解はできるけれども、少しアングルが違っていて、なるほど、そういうふうに括って整理ができるんだ、そういう視点をもつことがあるんだと思うことがありまして、新鮮さがあります。


Interbeing社がサービスとして提供されている「組織や集団の声を科学的に分析する」ということからは少しずれてしまうのですが、対象を「集団」ではなく「一人」にまで絞った時、これはこれで、そこから得られるよい効果といいますか、メソドロジー(方法論)がきっとあるのではないかと思ってご相談してみた、というのが背景です。


先ほどお話したように、人によっては、据わりのいいフレームワークに収まると反応しやすいという側面はあるだろうと。逆に言えば、「話を聞きたい」というモチベーションがないと、あまり歩留まりがよくないということではないかと思います。


松本

まずは、ご自身一人のサンプルにおいて、ということですね。違うアングル、違う言語というのでしょうか。「どう違うか」ということについて、なかなか表現するのも難しいと思うのですけれど、あえて言うと、どんな違いを感じられますか。


川崎

以前、私個人とのやりとりの際に、ひとこと「周りがあっと驚くようなことをしてみたらどうなんですか」と。この発言に至るまでのやり取りがありますから、ここだけ切り取ってもわからないかと思うのですが、なるほどな、と思いました。言葉としては平たいですし、別の人が言ってもその意味合いはわかりやすく伝わると思うのですけれど、”まとめ方” として一つのサジェスチョン的なものがあって、なるほどと思った一つの事例ですね。


それから、私たちの組織をご覧になって「貴族のハンティング・クラブ」という表現で括られて、あぁなるほどねと。そういったまとめ方は、フレームワークをもっている組織改善プログラムの文脈からは絶対に出てこないと思うので、そこに、何か面白さを感じたということですね。聞いてみれば同じことでも、使われる言葉によって、説明の仕方は全然違うと思うんです。「組織にヒエラルキーが存在していますね」という言い方になるところを、そう言わない。どういうふうにすると刺さる言葉になるか、ということかもしれません。



“仏教×サイエンス” のinterbeingなメニューの可能性



松本

ユニゾン・キャピタルというご自身の組織のこともありつつ、クライアントに向けた事業として色々な組織に関わりながら、企業の再生などにハンズオンで突っ込んでいくような場面も沢山あるかと思います。普通のフレームワークには収まらないような、据わりわるい産業僧のようなアプローチを使い得る可能性のようなものは、例えばどういった組織であるでしょうか。


というのも、企業を再生させるということも、行き着くところまで行っているわけですよね。医療でいえば、まずはこういうアプローチをするよねといった対処法は大体やり尽くして、それでも回復しないぞ、といったところに関わっておられることが多いのではと想像しています。そんな川崎さんからみて、この漢方薬のようなものの使い道は、何処かにあると思われますか。


川崎

唯一無二のやり方ではないと思うけれど、ユニークなやり方ではあると思うんです。コンテクスト次第といいますか。組織に、そういうことを実践・リードしたい人物がいて、仕掛けをもってきたいということであれば、メニューの一つになるように思います。


先ほどお伝えした、私たちの会社で二分するような反応があったということに関して言うと、似たようなことはどこの組織でもあり得るわけですよね。うちの会社だけがユニークとも思えません。そういうところはそうなんだ、と。一方で、それが上手く作用するところもあるんじゃないかと思います。音声を分析するという工夫は、色々なものを可視化するためにはどうするかという、ツールとしての取り組みがあるかと思います。50人というよりは150人、200人と、より複雑な組織で多くのサンプルを取りながら、限られたリーダーの主観だけではないものとしての情報収集をするといった設定があると、インパクトがあるんだろうなと思いますね。



身体性に残されている、人間の未来をひらく



松本

今、オリンピックのアスリートたちに音声感情解析を使ってみようという面白い取り組みをしています。カリスマコーチとも言われているバレーボール日本代表のコーチの方が、自分のチームにぜひ導入したいということで、先日、練習合宿に弊社のデータサイエンティストの大成さんが行ってきました。


選手たちは、日頃から練習で声を出すわけですが、カリスマコーチともなれば、声でコンディションを判断しています。そして、一人一人の技術や精神をどうやって鍛えて伸ばしていくかということを、振り返りをしながら、色々な工夫をして本人にフィードバックするループを回している。そこに、音声感情解析を入れたいということでした。


先日社内で、「パロールとエクリチュール」が話題になりました。フランスのポストモダン哲学者ジャック・デリダによる、言葉をめぐる議論です。言葉には2種類あって、パロールは、喋ったり聞いたりする言葉。エクリチュールは、書いたり読んだりする文字ですね。デリダの議論は、現代は、エクリチュールがパロールを侵食していくようになっているというものです。その極みが大規模言語モデルであって、大量のテキストを食わせて、なんらかのセンスメイキングをしていく。それはエクリチュールであるわけですが、言葉というのはエクリチュールから出来たものはなく、必ずパロールから始まっていて、後から文字が付いて来たり来なかったりする。言ってみれば、動物もパロールをもっています。人間が人間になる以前の、動物としての声のようなものに、こういう時代だからこそ大きな可能性と意味があるんじゃないか。そして、動物的な瞬発力でやり取りされているのがスポーツの世界であり、武芸などもそうだと思いますけれど、そこをもっとみていくと、AIと人間の関係性の行き着く先に面白い水脈があるんじゃないかと探求しているところです。


川崎

スポーツは、利益創出を主眼とするビジネスとは似て非なる世界があると思うので、面白いですね。儲ければいいということとはちょっと違う。


松本

これから、色々な仕事や職業がAIに奪われると言われる中で、何が残っていくかというと、対人的なエッセンシャルワークであろうと。ディヴィッド・グレーバーに言わせれば、ブルシット・ジョブがAIが取って代わっていくような中で、もっと声を出していくようなところに未来があるんじゃないかと、私たちは、そこに掛けてみようと思っています。エクリチュールの世界はAIでいいじゃないか。むしろ、声を含めた身体の部分に人間の領域が残されているだろうと。


川崎

未来人は、テレパシーを使うから口がなくなるという話は、ないのですね。


松本

テレパシーというのは、意図ですよね。言語化できないことをやりとりしている。バレーボールの掛け声というのも、何という意味の伝達ではなくて、動物同士のやりとりみたいなものです。私たちは随分、意味性にひっぱられ過ぎたのではないですかね。左脳が肥大化し過ぎた。


川崎

考え過ぎですか。


松本

特に、オフィスワーク的なことをずっとやっている人にとっては、むしろそれだけやっていると、多分、どこかおかしくなっちゃうというか、行き詰まるのではないかと。


川崎

なるほど。


松本

ウェルビーイングを考えるにおいても、その辺に大事なものがあるんじゃないかと、これから探求していきたいと思っていますので、またご報告させてください。

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INTERVIEW

違う言葉、違う視点。違うものを投入したら、どうなるだろう。

ユニゾン・キャピタル株式会社

代表取締役

川﨑 達生 様

産業僧対話

ユニゾン・キャピタル株式会社

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代表取締役

川﨑 達生 様

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音声で聴く経営者インタビュー

00:00 / 42:20

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