貴社の事業についてお教えください。
株式会社カクイチは明治19年に田中商店としてはじまり、「 こたえのない問いにこたえつづける」をミッションに、現在はハウス事業・ホース事業・鉄鋼二次建材製品事業・ミネラルウォーター事業・ホテル事業・アクアソリューション事業・太陽光発電事業・EVフォーク事業・Maas事業・シリカライム事業と、様々な事業をグループ企業7社、グループ従業員600名で展開しています。
宮島様が普段ご対応されている業務はどのようなものでしょうか?
株式会社カクイチはグループ全体のホールディングスという立ち位置で、私は取締役として管理部門の特に総務、人事領域を担当しています。
グループ各社にも管理部門はありますが、2024年現在、カクイチはカンパニー制への移行をすすめており、私の直近のミッションとしては、各社にある総務部門の一元化プロジェクトを進めております。
ちなみに私は新卒でカクイチに入社しており、勤務開始から30年が経った生粋のプロパーです。
貴社の教育・研修の取り組みについて教えていただけますか?
一般的な企業研修はこれまで何度か導入・実施したことはもちろんあり、私自身もマネジメント研修を受けたことは数度あります。ですがいま振り返ってみると、正直なところ、個人としての変化や成長に役立ったケースはあっても、会社全体が研修によって変化した、という印象は正直あまり持てておりませんでした。
当社は毎月1回、全国の営業所、カクイチ内のマネジメント層が30名くらい集まる「所長会議」を開いています。会議名から毎月の数値状況の共有を行う場と思われがちですが、そうした情報はデータを見れ ば充分だと当社は考えており、所長会議は理念の再確認や価値観を共有する場としています。毎回10時から18時くらいまで行っているので、合宿みたいなものですね。
この所長会議を通じて、代表の田中や経営層の思いや考えをマネージャーに伝えることで、営業所長やマネージャーを通じて全スタッフに伝わる、というプロセスがカクイチの研修の取り組みといえるかもしれません。
宮島様がinterbeingを知ったきっかけをお教えください。
Interbeingの大成さんとは2018年くらいから面識があり、従業員のエンゲージメント調査をご依頼したときからお付き合いが始まりました。この調査も私にとっては斬新なもので、従業員の状態を定量化する技術があることに驚きました。また、大成さんから調査結果をフィードバックいただいた際、今後どうするべきかアドバイスもしっかりいただいたことが強く印象に残っています。
その後、2021年にInterbeing社を僧侶の松本さんと創業されたときに、「スタッフが医者にすぐアクセスできる“産業医”のように、僧侶にもアクセスできる”産業僧“というサービスを立ち上げました」という話を伺い、代表だけでなく私自身も興味を持ちました。
産業僧対話のどのようなところに興味を持たれましたか?
そもそも、僧侶の方と話す機会ってほとんどないじゃないですか。私のような一般人にとって、僧侶との接点は葬儀くらいですからね。それが、従業員が僧侶と対話するサービスなのですから、「どんな話を聞かされるんだろう」と思いました。
ですが、カクイチには「ファーストペンギン」になることを良しとする社風があります。他社様と比較して、カクイチの優位性は「スピード感」にあり、周囲より半歩先を行く、初めてのことにためらわずチャレンジする、そう いう風土があります。また、「“正しい”よりも“楽しい”を選ぶ」という意思決定の文化も、ここ数年で定着しています。
そうした当社のスタンスがあったことで、大成さんから産業僧対話についてお聞きしたとき、「面白そう、やってみましょう」と、代表の田中を説得しGoサインを出しました。
産業僧対話は従業員のどなたに受けさせましたか?
一部のメンバーだけではなく、約400名の正社員全員に受けていただきました。22箇所ある営業所単位で、だいたい月に1~2個所ずつ、数名から多いときは20名位が対話していただきました。2021年に対話を開始し、2023年に予定のメンバーが産業僧対話を完了し終えるまでに2年かかりました。
記憶に残っている出来事があればお教えください。
正社員全員に受けてもらおうと考えた後、まずは当時問題を抱えていた拠点を優先的に受けてもらうように調整しました。そこではコミュニケーションに少々問題があり、なかなか本音が言えない状態にあったと、通常の面談を通じて把握していたところです。
その拠点で産業僧対話をまず受けてもらったところ、Interbeingから出てきた結果レポート(*)で、異常値が出ていました。
*結果レポートとは、対話中の音声からAI音声感情解析を行った結果レポートのことです。産業僧対話は、僧侶と社員がオンラインで1対1で対話します。社員の心理的安全性を第一に考え、会話の内容は会社には公開していません。そのかわり、会社には音声感情解析をレポートとしてフィードバックしています。
その拠点で産業僧対話をされた方は、面談や通常のコミュニケーション内容はいたって平静な印象なのですが、音声感情解析のレポートでは怒りと興奮に満ちており、これは通常のアプローチでは気づけないものでした。結果として、産業医への受診を促し、改善のきっかけとなりました。
産業僧対話について説明いただいた際、「声は嘘をつかない」とおっしゃられていましたが、レポートをみると本当にその通りなんだなと。
宮島様ご自身も産業僧対話を受けられましたが、どのような印象でしたか?
50分という時間設定でしたが、当初は何を“聞かされる”んだろう?と考えていました。ですが、自然に僧侶の方との対話が始まり、終わっ てみるとあっという間でした。
対話のあとは、心に余白ができた感じでした。自身の振る舞いや行いについて、振り返りや棚卸しが短時間でできて、結果としてスタッフに向ける目線がおのずと変わりました。
それも、僧侶の方が話を整理してくれるというものではなく、対話を通じて自分の中にいるもう一人の自分が整理する、という感覚でした。他のスタッフに感想を聴いてみても、「話をきちんと聴いてもられた」「褒められた」「共感してもらえた」という声が多く、それは逆説的に、会社としてそれらのポジティブなフィードバックの機会を提供できていなかったのでは、という気づきにもつながりました。
経営陣として、産業僧対話にはどのような価値がありますか?
正社員全員に産業僧対話を受けてもらった意義としては、共通言語を持てたことがあります。それはたとえば、所長会議で「スタッフとの対話には、きちんと正面から向き合って対話し、しっかりフィードバックしよう」と案内することが容易になったり、個別に指導する際も「産業僧対話で体験したフィードバックは、こうではなかった?」という指導ができるようになり、全社としてコミュニケーションの質が向上しました。
また、産業僧対話を通じて、会社の潜在的な課題を可視化することができたと思います。人はなかなか本音を言ってくれません。その本音を無理に引き出そうとするのではなく、対話の音声から感情を解析して可視化するというアプローチは他にはありません。また、会話の内容は会社には伝えないため、社員の心理的安全性も保てます。
課題がない企業は存在せず、課題が潜在的なまま長期間経過してしまうと、離職だけでなくさまざまなトラブルに形を変えて噴出してしまいます。産業僧対話では潜在課題を早期に顕在化することができて、それによって例えば、人事異動によって人間関係のトラブルを未然に防ぐ、といった手を打てるようになります。
事例を読んでいる方に一言お願いいたします。
産業僧対話は、組織、経営層個人の両方にとっておすすめできるサービスです。
個人としては
・自分の振り返りの時間を持てる
・意外な自分も発見できる
組織としては、
・会社での存在意義を実感することで帰属意識が醸成される
・組織風土の開発ができる
プログラムだと言えるのではないでしょうか。
ありがとうございました。
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INTERVIEW
僧侶との対話を通じ、組織・個人をともに成長させる「産業僧対話」
株式会社カクイチ
取締役
宮島 宏至 様
産業僧対話
株式会社カクイチ
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宮島 宏至 様
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音声で聴く経営者インタビュー
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