2025年11月28日
ライフテックグランプリ2025・最優秀賞を受賞してー声から“関係性”を見るという挑戦
2025年10月25日、「ライフテックグランプリ2025」にて、
株式会社Interbeingの「声から関係性の質を可視化するAI音声解析技術」が、
最優秀賞
太陽誘電賞
一般投票一位
の3つの賞をいただきました。

国内外から335チームが応募し、その中から選ばれた12チームのファイナリストの一つとして登壇し、さらにその中から3冠に選出されたことになります。
まずは、ここまでご一緒くださったクライアント企業のみなさま、対話の現場を共につくってきた仲間、データに向き合い続けてくれたチームに、心からの感謝をお伝えしたいです。
受賞内容の詳細は、こちらのプレスリリースにまとめています。 株式会社Interbeing、「ライフテックグランプリ2025」にて最優秀賞を含む3冠受賞(PR TIMES)
ここでは、プレスリリースでは書ききれなかった 「なぜこの技術をつくってきたのか」「現場で何が起きているのか」について、少しだけ裏側をお話しします。
「犯人捜しではなく、“働く人の幸福”のための分析をしたい」
Interbeingの技術は、最初から「音声解析をやろう」と決まっていたわけではありません。
もともと私は、People Analyticsとして、エンゲージメントサーベイや人事データの分析に長く関わってきました。
そのなかで、どうしても拭えない違和感がありました。
数字はきれいに出ているのに、現場の人は疲れている。「満足していますか?」と聞くと「はい」と答えるけれど、 本音では「しんどい」「もう限界」と感じている。
アンケートはとても有効な手段ですが、そこにはどうしても 「建前」や「期待に応えようとする気遣い」が混ざります。
本当はストレスが高いのに「元気です」と答えてしまう
上司や会社への遠慮が働いて、ネガティブな選択肢を選びづらい
そうした現場を見続けるうちに、
“犯人捜し”のように「誰が悪いか」を特定する分析ではなく、 「どうすればこの人たちが、安心して働き続けられるか」を 一緒に考えるための分析がしたい。
と思うようになりました。
このときに出会ったのが、仏教の「縁起」の考え方です。
誰か一人が悪いのではなく、「関係性の網の目」が今の状態を 生んでいる。
ならば、個人ではなく“関係性そのもの”を見に行く必要があるのではないか。
そこから、「声から関係性の質を測る」という現在の技術の方向性が生まれました。
なぜ「声」なのか──自律神経と、言葉になる前のサイン
声帯は、自律神経の影響を強く受けます。私たちは、どれだけ言葉で「大丈夫」と取り繕っても、声のトーンやリズム、わずかな揺らぎに、ストレスや安心の状態がにじみ出ます。
声は、ごまかしづらい“正直なデータ”である。
この仮説のもとで、1on1・会議・商談・日常会話などの音声を集め、 トーン、リズム、抑揚、揺らぎなど700種類以上の特徴量を抽出し、 AIで解析する仕組みをつくってきました。
そこから、
喜びや怒りといった「感情」
前向きさを示す「意欲」
心身の負荷としての「ストレス」
他者への配慮やつながりを示す「利他性」
など35項目をスコア化することで、人と人との「関係性の質」を数値として捉えられるようになってきました。
言葉の内容ではなく「音」だけを見るため、国や言語を超えて測定できる点も、この技術の大きな特徴です。
バーンアウト、会議、商談──現場で見えてきたこと
今回のコンテストでは、特に次の3つの実証結果を中心にお話ししました。
1. 声からみるバーンアウトの兆し
心理学で用いられている燃え尽き度の尺度(MBI)と、音声から推定したストレス指標のあいだに高い相関(r=0.76)が見られました。
これは、「もう限界です」と本人が自覚して言葉にする前に、声から変化を察知できる可能性を示しています。
「問題が起きたあとに“誰のせいか”を探す」のではなく、 問題が起きる前に“どう支えるか”を一緒に考えられるようにしたい。 この技術は、そのための補助線になり得ると考えています。
2. 会議の「空気」を数値で振り返る
会議の音声から「意欲」と「ストレス」を測定すると、 場の状態がいくつかのパターンに分かれて見えてきます。
前向きで健全な集中状態
活気や緊張感に乏しい、停滞感のある状態
熱量はあるが、負荷も大きく疲弊しやすい状態
意欲が低く、ストレスだけが高まっている状態 など
これを、「良い・悪い」と評価するためではなく、 ファシリテーターやマネジャーが自分の関わり方を振り返るための鏡として使っています。
「この時、誰の声がよく出ていて、誰の声が沈んでいたのか」
「議論が激しくなったあと、場は回復していたのか、それとも消耗していたのか」
こうした問いを、感覚だけでなくデータと合わせて語れることで、 会議のあり方や、チームの対話の質を少しずつ変えていくことができます。
3. 商談の「場のエネルギー」と成果の関係
営業の現場でも、興味深い傾向が見えてきました。
成立に至った商談では、「喜び・興奮」に関わる感情エネルギーが大きく、 参加者全体に適度な活気があるケースが多いこと
一方、不成立だった商談では、 感情の起伏が小さく、終始フラットなまま終わるケースが多いこと
もちろん、声だけで結果のすべてが決まるわけではありません。
ですが、うまくいった商談に共通する「声のパターン」を可視化することで、
「属人的な営業スタイル」から「共有可能な学び」へ変えていくことが可能になります。
335チームの中から選ばれて、改めて感じたこと
335チームの応募から12のファイナリストが選ばれ、それぞれが圧巻のテクノロジーとストーリーを携えて登壇していました。
その中で、Interbeingの技術を評価いただけたことは、「声」「関係性」「働く人の幸福」といったテーマが、今の社会にとって大きな問いであることの表れだと感じています。
同時に、今回の受賞は「ゴール」ではなく、ようやくスタートラインに立てたという感覚が強いです。
データだけでは、人の苦しみも喜びも測りきれない
けれど、データがあるからこそ、見落としていたサインに気づけることもある
仏教の「縁起」の考え方と、データサイエンスの力を行き来しながら、 一人ひとりが安心して働き続けられる“場”を増やしていきたいと思います。
これから一緒に取り組みたいこと
今回のグランプリを通して、
離職・バーンアウトの予兆を、アンケート以外の手段でも知りたい
1on1や会議の「空気」を可視化して、マネジメントや育成に活かしたい
商談や営業トークの音声データをもっと活用したい
といったご相談を、さまざまな方からいただくようになりました。
Interbeingでは、企業・教育機関・スポーツチームなどとともに、小さなPoCやトライアルから、一歩ずつ実装を進めていきたいと考えています。
もし、この記事を読んで、
自社の「声」を見てみたい
チームの関係性を、データと対話の両方から考えてみたい
と思っていただけた方がいらっしゃいましたら、 ぜひお気軽にお問い合わせください。
これからも、「声から関係性の質を可視化する」技術を通じて、働く人が少しでも安心して、いきいきと挑戦できる社会づくりに貢献していきます。

